5、一字千金

意味  文字や文章・詩文が立派できわめて価値のあること。すぐれた文章・詩文や筆跡をほめていう言葉。また、厚い恩恵のたとえ。

類句

 一字百金;一字連城
由来

 さて、「奇貨居(きかお)くべし」(→前項)が成功、秦の丞相となり富を築いた呂不韋(りょふい)は、食客(しょっかく)を多く招いた。食客とは貴族のもとに居候する人達のことで、臣下ではなく、特に何をやるわけでもない。そんな食客を、呂不韋は一人で3千人も養ったという。食客が多く集まれば集まるほど名声が高まった印なのである。

 さて、呂不韋はそれらの食客にさまざまな地方の見聞を広めさせた。そしてそれをまとめたものが、「八覧」「六論」「十二紀」など20余万語からなる『呂子春秋(りょししゅんじゅう)』(『呂覧(りょらん)』ともいう)なのである。皆さんの中にもどこかでこの『呂子春秋』を読んだという方は多いことだろう。
 呂不韋は、この中には天地・万物・古今の事柄すべてを網羅したと自負し、咸陽の市場の門にそれを並び立て、諸国の学者論客を招き寄せた。そして千金をその上につり下げ、一字でも増したり削ったりできた者がいれば、千金を与えるといったのだ。千金といったら相当な大金である。誰一人として声をあげる者はなかったという。
原典 呂不韋乃ち其の客をして人々に聞く所を著せしめ、・・・号して呂氏春秋と曰ふ。咸陽の市門に布(つら)ね千金を其の上に懸け、諸侯の游子・賓客を延き、能く増損すること有る者には千金を予ふ。[史記 呂不韋列伝]

 

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