4、奇貨居くべし

意味  珍しい品だから、後日の利益のために買っておこうの意。転じて、到来した絶好の機会を逃す手はない、おおいに利用せよということ。

類句

 好機、逸すべからず;Strike while the iron is hot.;Make hay while the sun shines.
由来

 戦国時代も終わりが近づこうとしている頃、陽?(ようてき)という土地に呂不韋(りょふい)という大商人が現れる。彼は趙(ちょう)の都、邯鄲(かんたん)で人質となっていた秦(しん)の公子「子楚(しそ)」をみつける。このころ国家間では同盟の保証や友好の証として君主の子供が他国に人質として送られることがしばしばあったのである。さて、この「子楚」を知った呂不韋(りょふい)は、憐れむと同時に、彼を利用して一儲けしようと考える。そのとき彼は「奇貨居(きかお)くべし」と考えたのである。

 「奇貨」は珍しい品物のことで、「居くべし」とは蓄えておくべき、という意味だ。珍しい品物は買っておけば、将来値打ちが出て、儲かる。大商人の呂不韋は、子楚に自分の野望を見たのである。
 どういうことかというと、君主の継承権を持ちながら不遇の生活を送っている子楚を、次期の秦の君主にしようというのだ。とはいうものの、秦(しん)と趙(ちょう)の関係が悪化していたこともあり、秦からの仕送りも少ない子楚の生活は困難を極めていた。そこで呂不韋は自分の全財産を子楚に「投資」する決心をするのだ。
 呂不韋はあらゆる手段を尽くしてこの不遇の公子を君主の位へと近づけた。そしてついにそれは実現するのである。当然ながら呂不韋の功績は限りなく大きく、子楚が即位して荘襄王(そうじょうおう)となると、丞相(じょうしょう)の位につき、広大な領地を与えられる。丞相として呂不韋は秦の国力の一層の増強に努めた。そしてこの荘襄王の子こそが、中国史上初めての統一国家を築き、初めて皇帝を名乗る人物  秦の始皇帝  となるのである。
原典 呂不韋邯鄲に賈し、見て之を憐みて、曰く、「此れ奇貨なりくべし」と。乃ち往きて子楚に見ゆ。[史記 呂不韋列伝]

 

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