故事成語1

唇亡びて歯寒し

 

【意味】
唇が亡んでしまうと歯がむき出しになって寒くなることから、互いに助け合うもの同士の一方が亡びれば、他の一方も危うくなるというたとえ。
【類句】
唇歯輔車(しんしほしゃ)、フランス滅亡の日は英国滅亡の前夜なり(英語)
【由来】
 中国の春秋時代、中国はいくつもの国に分裂して争いを繰り返していた。その中に晋(しん)という国があった。ところがこの国も本家と分家に分裂していた。約60年の分裂期間を経て、分家の武公(ぶこう)(国の君主の名前は基本的に○公となる。これは死後に贈られる称号で、諡号(しごう)という)という人が本家を武力で攻略、本家の人間を一人残らず殺して反逆を未然に防ぎ、威権が衰えていた周王室に財物を大量に贈って周王(日本史でいう天皇)に晋の統一を承認させた。

 この3年後に武公の子、献公(けんこう)が君主の位に即位した。献公は即位すると小民族や近隣諸国を次々と攻略し、領土を拡大していった。ある時献公は虞(ぐ)と?(かく)という2つの小国を攻略することを考えた。しかしこの夫(職名)の旬息(じゅんそく)が作戦を考えた。2国を一気に攻めるのは困難だということで大

 それは、「まず?(かく)を、?(かく)に亡命している晋の公子(次期君主以外の君主の子、または兄弟)を保護する名目で攻める。その際虞を通る必要があるが、虞公(ぐこう)(国名の後に公がくるとその国の君主という意味、この場合虞の君主のこと)に璧(へき)(ガラス製品)と名馬を贈って通してもらう。そして?(かく)を討った帰り道に虞を攻める。」といったものだった。

 献公(けんこう)はその策をとり、虞公に璧と名馬を贈り、通してもらえるよう願った。虞公は璧と名馬を気に入り、あっさりそれを許してしまった。そのときそのことに難色を示して大夫の宮之奇(きゅうしき)が虞公を諫めた言葉が「唇亡びて歯寒し」である。

 「虞が歯であれば?(かく)は唇のようなもので、その唇が亡びれば歯はむき出しになってしまうから、晋軍を通すべきでない」ということである。しかし虞公はこの諫言を聞き入れず晋軍を通し、?(かく)を攻めた帰り道の晋軍にあっけなく滅ぼされてしまった。

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