はじめに

 

 現在、日本には様々なことわざ・慣用句・四字熟語がある。これらは僕たちに様々な教訓を与え続けてくれる、いわば知恵の宝庫である。しかし、忘れてはならないのが、これらが故事にまつわることが多いということである。故事=昔実際に起こったことから、教訓をいかし、ことわざになったものは少なくなく、大変興味深い。今回はそんな故事成語の中から、古代の中国、春秋時代(B.C.770〜403)から戦国時代(B.C.403〜A.D.221)にかけてを舞台とする故事成語9個+αを紹介していこうと思う。
 マイナーなイメージのある中国の春秋戦国時代、この時代は中国がいくつもの国に分裂し、「諸侯(しょこう)(これらの国の支配者)」が権威の衰えた「周王朝(日本で言う朝廷)」を無視して戦乱を繰り広げていた時代である。しかし、ただ戦いに明け暮れていたわけではなく、孔子や孟子に代表される「諸子百家(しょしひゃっか)」と呼ばれる思想家たちが自由な発想をしていた時代でもある。現在中国で用いられている故事成語の大半も春秋戦国時代が起源だという。
 故事成語の真意を知っていれば、故事が僕たちに投げかけた多くのメッセージをしっかりとキャッチすることができると思う。知らないものも多いかもしれないが、これを機に故事成語の秘めた無限の広がりを実感していただけたら幸いである。

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