無為自然

老子・荘子

 

 実は老子(ろうし)が実在したか、疑問視されている。彼の伝記は不明。
 老子の思想は独特だ。彼が理想とするのは「赤子」である。何も知らない赤子こそが人間の理想の姿だというのである。
 老子は「万物の根本になる真理」を「道」とよび、また、それのことを「一」と名づけることが多い。一は分割ができない「すべて」であり、「知る」ことはそれをどんどん分割してしまうだけだというのである。
 分析をかけることはものを分けて析(さ)くことであり、理解は理(すじめ)をつけて分解することだという。これでは真理である「一」を知ることはできない。
 だからこそ、老子はすべての知識を否定し「無為自然(むいしぜん)」こそが至上であるとしたのである。彼は「東洋における無の哲学の祖」であるのだ。
 さて、老子の思想を受け継いで、さらに発展させたのが荘子(そうし)である。彼がかなりその幅を広げていったので、この二者の思想を合わせて「老荘思想(ろうそうしそう)」と呼ぶ。老荘思想は国家思想であった儒教と対立しながらも大衆に受け入れられ、日本にも多大な影響を与えている。